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相続の仕組みが変わる⁉
2018年7月6日
「民法及び家事事件手続き法の一部を改正する法律」が成立。
この法律が変わると、私たちの暮らしに大きな影響を与えます。
高齢化が進み、相続時の配偶者の年齢も高齢化する傾向にあります。
そのような相続をする配偶者の生活に配慮する必要性などが問題視されるようになり、
2014年以降の本格的な検討や審議を経て、今回ようやく40年ぶりの大幅見直しが実施されることになりました。
では、何が変わるのでしょうか
POINT
1.配偶者の居住権の保護(2020年4月1日施行予定)
2.遺産分割等に関する見直し(2019年7月1日施行予定)
3.遺言制度に関する見直し(2019年1月13日施行 保管制度は2020年7月10日施行予定)
4.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
この4点が変わります。
では、具体的に見ていきましょう
《具体的な変更点》
1.配偶者の居住権の保護
現在の制度では、妻(配偶者)が夫(被相続人)死亡時に、夫名義の住宅に住んでいた場合、
原則、夫と妻の間で使用貸借の契約が成立していたと推認するとされています。
ですがこのままだと、その住宅が第三者に遺贈されてしまったり、夫(被相続人)が反対の意思表示をしたりした場合、
使用貸借が推認されず、妻(配偶者)の居住が保護されない可能性がありました。
そこで、今回の改正によって配偶者が住宅の遺産分割に関与する際、その住宅がどの相続人に帰属するかが確定するまで、
また、住宅が第三者に遺贈された場合や配偶者が相続を放棄した場合、その住宅の所有者から消滅請求を受けてから6カ月は、
「居住建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)」を取得するものとされました。
難しいので簡単に言うと、夫名義の住宅に妻が無償で住んでいた場合、
夫の死亡後その住宅の所有権を妻が取得しなかったとしても、最低6カ月は住み続けられる権利が与えられるようになるわけです。
それにプラスして、「配偶者居住権」という考え方が創設されました。
今の制度では、妻が夫死亡後に夫名義の住宅を取得する場合には、住宅以外の財産が少ないと、
その他の財産は子供が取得する形になり、妻がほかの財産を受け取れなくなってしまう恐れがあります。
そこで今回の改正によって、遺産分割の選択肢の一つとして、
夫(被相続人)の遺言等によって妻(配偶者)に「配偶者居住権」を取得させることが出来るようになります。
これによって、遺産となった夫名義の住宅が妻の配偶者居住権と、子の負担付き所有権に分けることが出来るようにになります。
簡単に言うと、住宅の権利を分けることが出来るようになるということです。
住宅を分けることが出来れば、その分他の財産を受け取ることが出来るようになります。
例えば…
住宅が3,000万円の場合
今の制度 → 妻 住宅(3,000万円) + その他の財産(500万円)
改正後 → 妻 住宅(1,500万円) + その他の財産(2,000万円)
そうすることで、将来的にお金が足りなくなってしまうという不安がなくなります。
2.遺産分割等に関する見直し
贈与税には、配偶者控除という制度があります。
婚姻20年以上の夫婦間で居住用不動産そのもの、または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行なわれた場合、
基礎控除(110万円)とは別に2,000万円まで贈与税を課さないという制度です。
この制度を利用していた場合、現在の制度では遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため、妻が実際に取得する遺産は、
贈与がなかった場合と同じになってしまう可能性があります。
それが今回の改正によって、遺産の先渡しとして取り扱わなくてよいとされます。
贈与されていたかどうかは関係なく、遺産分割をすることが出来るようになり、
夫が生前に贈与した趣旨を尊重した遺産分割ができるようになります。
さらに、現在の制度では、被相続人の預金口座は遺産分割が確定するまでは凍結され、お金を引き出すことはできません。
しかし、今回の改正によって、一定金額(口座残高×1/3×法定相続分)までは単独での払い戻しが可能となります。
また、遺産分割前に共同相続人の一人が遺産の処分をしてしまった場合、他の相続人に不公平が生ずる場合があります。
この点についても今回の改正で不公平を是正する措置が講じられるようになります。
3.遺言制度に関する見直し
現在の制度では、自筆証書遺言は、財産目録もすべて自書しなければなりません。
それが今回の改正によって、財産目録はパソコンなどで作成した目録を添付したり、
銀行の通帳のコピーや不動産の登記事項証明書などを目録として添付したりすることが出来るようになります。
また、法務局による自筆証書遺言の保管制度ができる予定です。
自筆証書遺言は公正証書遺言と比べて簡単に作成できるものですが、紛失や改ざんの恐れがあります。
それを法務局が保管してくれるようになれば安心です。
4.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
仮に父親の介護を長男のお嫁さんが行なっていた場合
その父親が亡くなっても、長男の妻は相続人ではないため、相続財産を受けとる権利はありません。
長男が生きていれば問題ないのですが、父親よりも先に長男がなくなっていた場合、
相続財産は次男などの他の子どもに分配されます。
それが今回の改正によって、相続人以外の親族の貢献度合いを考慮し、
一定要件の下で相続人に対して金銭の支払いの請求ができるようになります。
これによって介護等の貢献に報いることが出来、実質的な公平が図れるようになります。
まだ自分には関係のない話だから…と思わず、
事前に知っていることで役に立つこともありますので、改正するこの機会に頭の片隅にでも入れておくようにしましょう。